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「ピエタ」 大島真寿美

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18世紀ヴェネチア。当時、ピエタ慈善院という、捨てられた赤ちゃんを預かる施設があった。今で言う赤ちゃんポスト。「四季」の作曲家で知られるヴィヴァルディはピエタ寺院の司祭でもあり、慈善院で養育された少女たちで編成された”合奏・合唱の娘たち”の音楽指導をしていた。これは事実らしい。



主人公は45年前ピエタに捨てられたエミーリア。恩師ヴィヴァルディの死をきっかけに、ある楽譜を探すところから物語ははじまります。

限られた世界しか知らなかったエミーリアは、その楽譜探しをきっかけにたくさんの人と出会います。ピエタ出身の女性、貴族の娘、高級娼婦、ヴィヴァルディの姉妹、心優しいゴンドリエーレ。なぜか彼らはヴィヴァルディとつながりがあり、それによって改めてヴィヴァルディの素顔も知ることになるのでした。彼らの友情を描いた物語です。

登場する女性たちの心情が丁寧に描かれて、ヴェネチアという偏狭な土地で懸命に生きていた女性たちの感性にキラキラしたものを感じました☆
本当の幸せとは時代や身分に関係なくとても普遍的なもの。とくに貴族の娘に生まれながら、家庭運に恵まれず、それでもピエタの少女たちのことをずっと見守り続けたヴェロニカが印象的でした。

「娘たちよ、よりよく生きよ、よりよく生きよ」
ヴィヴァルディの曲に合わせて歌われたこの言葉が余韻となって残ります。


それにしても、18世紀のヴェネチアにすでに赤ちゃんポストがあったという事実に驚きました。今でこそ水の都として栄えてますが、何の資源も独自の経済力もないヴェネチアは、貴族には特権があってもの普通の市民は本当に貧しかったのですね。

ピエタ慈善院はサンマルコ広場にほど近い海に面したところにあったそうで、今はもうなくなってます。現在はホテルになってるとのこと。それが、4年前私が滞在したホテルだということがわかってビックリしました!壁には赤ちゃんポスト跡もあるとか。ホテルのとなりには今もピエタ教会がある。

そう思うと、物語の場面場面が鮮やかに浮かんでくるようでした。エミーリアがカーニバルの日、仮面をつけてピエタからこっそりゴンドラで出かける様子。あの水路を行き来したんだな~。老齢のゴンドリエーレがゴンドラを漕ぎながら歌うシーンも。水の音が聞こえてきそうです。

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by anan627 | 2011-12-02 16:56 | | Comments(0)